「あの人たちって、いつも誰かの悪口を言ってるよね」

そんな人、職場や知り合いの中にいませんか?
そして、時には自分も、気づくとその輪の中に入ってしまっていることはありませんか?

悪口には不思議な「コミュニケーション効果」があるのをご存知でしょうか。今回は、いつも人の悪口を言っている人たちが、なぜそうなってしまうのか、そしてそこから抜け出すためにはどうしたらいいのかについて考えてみたいと思います。

悪口の「魔力」

距離が縮まったような錯覚


誰かの悪口を言うと、なんだか相手との距離が縮まったような気がしませんか?
これまで表面的な会話しかしていなかった人と、急にプライベートな話ができるようになったような感覚。

「実は、○○さんって△△なんですよ」
と秘密を共有することで、特別な関係になったような気持ちになります。

相手が「えー、そうなんですか!」と驚いてくれたり、「分かります、私も思ってました」と共感してくれたりすると、なんだか認められたような、受け入れられたような気持ちになるものです。

反応がもらえる快感


人は誰でも、自分の話に反応してもらいたいものです。でも、「今日は良い天気ですね」という当たり障りのない話では、大きな反応は期待できません。

一方、ちょっとした悪口や愚痴は、相手の反応を引き出しやすいのです。驚き、共感、同調…様々な反応が返ってくることで、「この話、面白がってもらえた」「私の話を聞いてくれている」という満足感を得られます。

悪口の「罠」にはまる人たち

ネタ探しが始まる


最初は何気なく言った悪口が、思いのほか盛り上がったとします。
すると、仲間に入れた気がして、心のどこかで「また面白い話ができないかな」と思うようになります。

そして、いつの間にか人のあら探しを始めている自分に気づきます。

「あの人のあんなところ、変だよね」

「この人って、こういうところがダメだよね」

普段の生活の中で、人の悪いところばかりに目が向くようになってしまうのです。

思考のクセが変わっていく


毎日のように人の悪いところを探していると、それが思考のクセになってしまいます。ネガティブな部分を敏感にキャッチするアンテナが、いつもピンと立っている状態。
良いことよりも悪いことの方が、先に目につくようになります。感謝よりも不満の方が、心に浮かびやすくなってしまうのです。

表情や雰囲気まで変わってしまう


常にネガティブなことを考えていると、それは表情にも現れます。

  • 眉間にシワが寄りがちになる
  • 視線が鋭くなる
  • あら探しをするようなまなざしになる

――離れたところからジッと見つめて観察しているようなしぐさもします。

周りの人は、なんとなくその人の「負のオーラ」を感じ取るので、本当に心を開いて話せる関係を築くことが難しくなってしまいます。

悪口でつながった関係の特徴


悪口を楽しむ人たちの関係を観察してみると、興味深いことが分かります。

お互いに「もっと刺激的な話はないかな」「もっと面白い悪口はないかな」と、常にネタを求め合っているのです。まるで、より強い刺激を求める中毒のような状態。

そして、そんな関係の中では、いつの間にか自分自身も誰かの悪口のネタにされているかもしれない、という不安も生まれます。
信頼関係というよりは、お互いの弱みを握り合っているような、不安定な関係になってしまいがちです。

不安定な関係を保つために、1つでも多く悪口ネタを集め、より刺激的な内容に変換するような思考が生まれます。
どんな出来事も『悪いこと』として受け取ってしまうクセが付いてしまうのです。

同じ出来事でも受け取り方は様々


面白いことに、目の前で起きている同じ出来事でも、その人の思考のクセによって受け取り方が180度変わってしまいます。

例えば、家族が家事を手伝ってくれたとします。

幸せアンテナの人は、「助かるな、嬉しいな」と感謝の気持ちが浮かびます。相手の優しさや思いやりに目が向きます。「ありがとう」という言葉が出てくるかもしれませんね。

ネガティブアンテナの人は、「自分のやり方を否定された」「責められている」と受け取ってしまいます。相手の好意を、攻撃や批判として感じてしまうのです。嫌味の一つでも言うかもしれません。

愚痴は悪いことじゃない!


誤解しないでいただきたいのは、愚痴や不満を言うこと自体が悪いことではない、ということです。

誰だって嫌なことはあるし、つらいこともあります。「自分だけがこんな思いをしているのかな」と孤独を感じることもあるでしょう。そんなとき、信頼できる人に話を聞いてもらうことで、心が軽くなることは確かにあります。

大切なのは、「誰に」「どんなふうに」話すかということ。

ある程度の信頼関係がある人、本当に自分のことを思ってくれる人に、解決策を見つけるために話すのか。それとも、お近づきになるための手段として、単に盛り上がるネタとして、誰かれかまわず話すのか。

その違いは大きいと思います。

幸せアンテナの育て方


では、どうすれば「幸せを引き寄せるアンテナ」を育てることができるのでしょうか。

小さな良いことに気づく練習


毎日の生活の中で、ほんの小さな良いことに意識を向けてみる。

  • 朝のコーヒーが美味しかった
  • 電車で席を譲る学生をみた
  • 知らない人が扉を押さえてくれた

そんな小さなことでも、「あ、良かった」「ありがたいな」と思う瞬間を大切にしてみます。

人の良いところ探しゲーム


人のあら探しではなく、良いところ探しをしてみます。


「この人のこんなところ、素敵だな」

「あの人のあの行動、優しいな」

最初は意識的にやる必要がありますが、続けているうちに自然と人の良い面に目が向くようになります。

感謝の言葉を口に出す


心の中で思うだけでなく、実際に

「ありがとう」

「助かります」

「素敵ですね」

と言葉に出してみる。


相手も嬉しいし、自分も言った後に温かい気持ちになります。そして、その温かさが自分の表情を明るくしてくれます。

幸せは伝染する


不思議なことに、いつも前向きで感謝の気持ちを持っている人の周りには、同じような人が集まってきます。そういう雰囲気は、言葉にしなくても自然と伝わるものです。
悪口ではなく、お互いの良いところを認め合える関係。困ったときには助け合える、本当の信頼関係。そんな人間関係の中にいると、自然と心も軽やかになります。

アンテナを向ける方向を選ぶ


私たちは皆、様々なアンテナを持っています。どこにそのアンテナを向けるかは、自分で選ぶことができます。

人の悪いところばかりに向けてしまうのか、それとも人の良いところや、自分の幸せにつながることに向けるのか。
その選択が、毎日の気分を変え、表情を変え、人間関係を変え、そして人生そのものを変えていくのかもしれません。

今日から少しだけ、アンテナの方向を変えてみませんか?
きっと、今まで気づかなかった小さな幸せが、たくさん見つかるはずです。