一生懸命勉強して、いざ、保育現場で働き始めたら…
「思ってたのとちがーう!!」
子ども一人ひとりに丁寧に寄り添う保育を目指していたのに、現実は集団行動に合わせなければならない。子どものペースではなく、活動や食事、午睡が一斉に進む。気分が乗らない子に、ゆっくり付き合う余裕はない。
一緒にパズルをしたがる子にこたえて、一対一で対応していたら、「周りもちゃんと見て!」と叱られてしまった…。
こんな経験はありませんか?
理想と現実のギャップは「専門職成長の通過点」
教育・福祉など、人を支える仕事では「リアリティショック(reality shock)」がよく知られています。理想を抱いて頑張ってきた人ほど、現実にショックを受けるものです。
でも、この「迷い」や「葛藤」は、専門性を育むプロセスの一部。心理学的にも、これは「未熟さ」ではなく、「理想と現実をすり合わせる発達課題」と捉えられています。
決して現場がおかしいのでも、あなたが未熟なのでもありません。
経験は「学ぶ」に変換されてこそ価値がある
ショックや戸惑いを感じるのは誰でも同じ。でも大切なのは、この「現実の経験」を、単なる"ネガティブな経験"ではなく、"学びに変える力"(省察:リフレクション)なんです。
その場に慣れるだけでは、「諦め」になってしまうかもしれません。 でも、意識して誰かに話す。相談する。そこから得られる経験が確かな専門的成長につながります。
新人時代の学びは、資格を取るために学習した「知識」や「技術」から、「経験知(実践知)へ移行する過程」です。このギャップは「理論を知っている状態」から「その場で最善の判断ができる実践知」へ移行するための、いわば「成長痛」なのです。
現場全体の支援の在り方
とはいえ、新人がこの過程を一人で乗り越えるのは難しいもの。 だからこそ、先輩や組織のサポート体制が不可欠なんです。
現場でのOJTやメンター制度、対話の機会があると、経験が苦痛ではなく「共有される学び」になります。
例えばこんな場面。
新人のAさんは、0歳児の午睡の寝かしつけがうまくいかず、落ち込んでいました。 そこで先輩保育士が、「最初はみんなそうだよ。でもAさんが声をかけると、子どもの表情が柔らかくなってたよ」と言葉をかけたんです。 自身の経験も交えて、「泣いている子がいると焦るよね。でも子どもが落ち着くには、先生が落ち着くのが先なんだ」とアドバイスしました。
先輩の役割は、慰めだけでなく新人が気づいていない子どもの小さな反応や新人のうまくいっていた部分を言語化してあげることで、新人の「自分で気づく力」を育むことでもあります。
こうしたOJTや対話を通じて、「失敗した」が「こういう過程を通して成長していく」に変わる。個人の"苦悩"が、チームで共有する"学び"になるんです。
また、保育後の対話も大切です。 例えば、子どもの喧嘩にどう介入すべきか悩む新人Bさん。 先輩に「うちはケガが起きそうかどうかで判断してるよ」とアドバイスをもらい、 主任からは「迷うことが子どもをよく見ている証拠」と成長を認めてもらいました。
こうした対話から学びを得て、悩みを共有できる環境があると、新人の成長につながります。
ギャップも学びと捉える姿勢を
社会的貢献への思いを胸に、理想を抱いて現場に飛び込む新人保育士。 そこからの現実に、大きなショックを受ける人もいるでしょう。
でも、このギャップを前向きに捉えることが大切です。
理想と現実のギャップで悩むことは、専門職として自然で健全な過程。 現実を経験値として積むときに、先輩に相談する、同僚と語り合うことで経験値が上がり、悩みを乗り越えていけるのです。
苦悩に向き合うには、我慢ではなく、学び、気づきへと変換する姿勢が欠かせません。 そして何より、個人に責任を負わせず、組織的な支援があることが重要です。
新人保育士のあなたへ
理想と現実のギャップに悩むことは、むしろ健全な成長プロセス。 その経験を、我慢するのではなく、学びに変えていく姿勢が大切です。
そして、それを一人で抱え込まないでください。 先輩に相談したり、研修の機会を活かしたり、仲間と語り合ったりすること。 その先に、必ず専門職としての成長が待っているから。
そして、いつかあなたが先輩になったとき。
ぜひ、新人の成長をサポートしてあげてください。
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