最近、保育の世界で「不適切保育」という言葉をよく耳にするようになりました。ニュースでも取り上げられることが増えてきて、保育士の間でも話題になっていますね。
この「不適切保育」について、いろんな見方やグレーゾーンも含めて考えてみたいと思います。保育士として知っておきたい基本的な内容ですが、「それも不適切?」みたいな話もあって、意外と複雑な問題なんですよ。
不適切保育ってなに?
厚生労働省によると、不適切保育とは「子どもの人権を侵害し、健全な成長や発達に悪影響を与える行為」とされています。
具体的には次のようなものがあります:
・身体的な行為:叩く、つねる、押す、長時間立たせるなど
・心理的な行為:怒鳴る、脅す、「ダメな子」「バカ」などの否定的な言葉
・発達を妨げる行為:一方的な指示だけで子どもの主体性を奪う
・尊厳を傷つける行為:着替えや排泄時に配慮しない、からかう
・偏った対応:お気に入りの子だけを特別扱いする
・安全管理の不備:目を離して放置する、危険な環境を放置する
これらは比較的わかりやすい例ですが、実は「これって不適切?」と悩むようなグレーゾーンもたくさんあるんです。
「これって不適切?」と悩むケース
保育の現場でよく使われる言葉や対応の中には、状況によっては不適切と見なされる可能性があるものがあります。例えば:
- 「手はおひざ」
- 「壁ぺったん」
- 「お口にチャック」
これらの言葉、私も使ったことがあるし、先輩保育士も言っていました。でも、使い方や状況によっては不適切と見なされることもあるんです。
なぜなら、こういった指示が:
- 子どもの気持ちを考えずに静かにさせるだけの手段になっている
- 子どもの自由を奪いストレスになる
- 一律の行動を強要し、子どもの主体性を奪う
…こんなふうに取られる可能性があるからです。
子どもの人権侵害の観点から考えると、ですね。
私自身、「先輩がやってるから」と何も考えずに言っていたこともありました。でも、言われてみれば、「なんで手はおひざにおくんだ?」と思いますよね。「静かに話を聞く態勢になるならそれでいいよねぇ…」って思ってしまいました。
日常保育での悩ましい事例
他にも、こんな事例はどうでしょう?
- 「泣いてもだめですよ」
- 「先生の言うことを聞かないとおやつなし」
- 「早く片付けないと、外遊びなしだよ!」
これらが、不適切になる可能性があるのは理解できます。
でも、
- 「お背中ぴん、で座りましょう」
- 「外に出る前にトイレに行くよ」
- 「みんなで縄跳びしよう!」
これらも不適切になるという考えがあります。
子どもの個別の状況やニーズを無視して一律にルールを押し付けている、子どもの主体性を尊重していないという見かたがされるのです。
保育の現場では、どうしても一定のルールや枠組みは必要ですよね。それに、子どもの安全を守るために、時には強い言葉で制止することも必要な場面があります。
だから、単純に「これはダメ!」とか「こうすべき!」とか言い切れない難しさがあるんですよね。
不適切保育が起こる背景
不適切な対応をしてしまう背景には、様々な要因があります:
- 人員不足と過重労働:忙しすぎて丁寧な関わりができない
- 教育・研修の不足:適切な対応方法を学ぶ機会が少ない
- 保育観の違い:「厳しさ」と「優しさ」のバランスの取り方
- コミュニケーション不足:職員同士の悩みや困りごとを共有できない
私も経験がありますが、定員いっぱいの子どもたちを少ない職員で見ていると、どうしても「早く」「効率的に」という発想になりがちです。
でも、そんな時こそ立ち止まって考えることが大切なんだと思います。
どうすれば適切な対応になる?
では、どうすれば「不適切」を避けて「適切」な保育ができるのでしょうか?
「お口にチャック」 → 「先生のお話、聞こえるかな?」「お友達の声も聞いてみよう」
「壁ぺったん」 → 「みんなが見えるように、少し間をあけて座ろうね」
「手はおひざ」 → 「お話しを始めるよ、準備はいいかな?」
つまり、なぜそうするのか理由を伝えることが大切なんじゃないかな。
私自身の経験から
現場ではいろいろな考えを持つ保育士がいるので、時には気になる対応を見て、「この対応ってどうなんだろう…」と悩むことがあります。
例えば、泣いている子を無視したり、食べられない子に「もう片付けちゃうよ」と言ったり。
中には野菜を嫌って食べない子を叱り、泣いて嗚咽して、そのせいで吐いてしまうということもありました。
勇気を出して先輩に相談していたら、少しは改善できたかもしれないけど、そのときの自分の立場から言うのは難しかったです。その場にいるのに助けられないふがいなさ…。
「これって不適切かも?」と思ったときに、一人で抱え込まずに誰かに相談すればよかったと思います。園内で話し合える環境があるかどうかが、実は子どもたちの環境にも大きく影響すると思います。
だからこそ、話せる人をひとりでも園内に見つけておきたいと思います。
そこから解決の糸口が見つかるかもしれません。
まとめ:子どもの気持ちに寄り添うことが大切
「不適切保育」について考えると、結局は子どもの気持ちに寄り添えているかが鍵になると思います。
子どもを大切に思う気持ちがあれば、少々言葉が足りなくても伝わることもあります。
日々の保育を振り返り、「なぜ私はこの言葉を使っているんだろう?」「子どもたちにどう伝わっているだろう?」と考えることが、よりよい保育につながるのかもしれません。