保育の現場で働いていると、様々な理由で「ここを辞めたい」と思うことがあるかもしれません。特に試験組保育士は、初めての現場で想像以上の苦労を感じることも多いようです。
今回は、退職を決意したときに知っておきたい「伝え方のポイント」と「次の職場での説明の仕方」についてお話します。これは私自身の経験と、多くの保育士さんの体験から学んだことです。
保育園を退職するときの伝え方〜感情的にならず、穏やかに事務的に

退職を伝えるとき、どうしても緊張したり感情的になったりしがちです。長い時間、悩んで、考えて、苦しんできたらなおさらです。でも、後々のしこりを残さないためには、できるだけ穏やかで事務的な言い回しを心がけることが大切です。
退職理由の伝え方(例)
パターン①:体調を理由にする場合(王道で角が立ちにくい)
「入職してから〇ヶ月間、全力で業務に取り組んできましたが、心身ともに不調が続いており、体調を最優先に考え、退職を希望させていただきます。」
体調不良の場合、病院での診察を受けておくようにします。療養休暇をとるようすすめられることもありますが、療養休暇を取った場合、必ず復帰の時期を視野に入れた対応が必要になります。退職を前提にしている場合は、引きとめにあっても「一度現場を離れてしっかり治したい」という意思を丁寧に伝えましょう。
パターン②:自分の適性とのミスマッチを理由にする場合
「働いていく中で、自分の力不足や環境とのミスマッチを痛感し、今のままではご迷惑をおかけすると思い、退職を決意いたしました。」
この理由は、相手によっては「もう少し頑張ってほしい」と引き止められることもあり、伝え方に注意が必要です。ある程度の勤務期間がある方に適しています。
特に短期間の場合は、「業務に慣れる前に判断しないでほしい」というのが現場の本音です。まずは基本業務を一通り経験することが求められる場合が多いでしょう。
パターン③:家庭の都合(ややぼかしたいとき)
「家庭の事情により、勤務の継続が難しくなったため、退職を希望しております。」
家族の病気、介護、引っ越しなど家族環境の変化が主な理由になると思います。やむを得ず、でも家庭を優先したいという姿勢で、理由は差し支えない範囲で伝える形になるでしょう。あまり細かく話す必要はありませんよ。
退職願・退職日について
退職の申し出は、法律上(民法)は「退職希望日の2週間前」に伝えれば問題ありません。しかし、保育業界では人員確保の難しさを考えると、できるだけ早めに伝えるのが良いでしょう。
一般的には1か月以上前(例:翌月末)が望ましいですが、保育園によっては、就業規則に「3か月前までに申し出ること」などと書かれている場合があります。法的拘束力はありませんが、会社に損害を与えるような退職の仕方をするとトラブルになることがあるので、注意が必要です。
伝えるときのポイント
- 感情を抑え、淡々と伝える(冷静なほうが相手も納得しやすい)
- 引き止められても、「体調や心の問題ですので...」と繰り返して大丈夫
- 伝えるときは事前にお話をする場を設けてもらうのが無難
立ち話でいきなり退職の意思を伝えるのは、礼儀として適切とはいえません。あらかじめ話す時間をお願いすることで、相手にも心の準備ができ、感情的な反応を避けやすくなります。落ち着いて、丁寧に伝えるよう心がけましょう。
この保育園が「嫌だから」ではなく「努力したけど限界」

退職理由を伝える際は、単に「この保育園が嫌だから辞める」というのではなく、「自分なりに努力したけれど限界だった」というニュアンスで伝えると、お互いに気持ちよく別れることができます。
伝え方の例
あなたの置かれた状況にあわせて、伝えやすい言葉にアレンジしてください。
例①:率直かつ丁寧な言い回し(おすすめ)
「入職してからの〇ヶ月間、現場で学ばせていただく中で、改めて自分の力不足や未熟さを痛感いたしました。自分なりに精一杯取り組んできましたが、業務の責任の重さや求められる水準に心身ともに負担を感じており、このままではご迷惑をおかけしてしまうと思い、退職を希望するに至りました。温かく支えていただいたにもかかわらず、このような形になってしまい、本当に申し訳ありません。」
例②:もう少しやわらかく、気持ちを込めて
「保育士として成長したい一心で努めてきましたが、想像していた以上に自分にとっての負担が大きく、今のままでは心身の余裕を保って働き続けることが難しくなってきました。現場で求められる水準の高さに対し、自分の未熟さを痛感する毎日でした。このままではご迷惑をおかけしてしまうと思い、悩んだ末に退職を希望いたします。」
例③:体調面も含めて伝える場合
「〇ヶ月間、なんとか現場に慣れようと努力してきましたが、体調を崩すようになってしまいました。仕事のスピードや求められる水準についていけないことへの焦りや、自信のなさも重なり、このまま続けていくことが難しいと判断いたしました。申し訳ない気持ちでいっぱいですが、退職を希望いたします。」
どの文面にも共通しているのは、「どんな思いで努力してきたか」「何が負担だったか」、そして「できる限り丁寧な形で職場を離れたい」という誠実な気持ちです。
無事に円満退職が出来たら、次は面接で「退職理由」を聞かれたときの対策です。
次の保育園で「退職理由」を聞かれたら

転職活動や次の職場の面接で「前の職場をなぜ辞めたのか?」という質問は必ず出てきます。この答え方が、あなたの印象を大きく左右します。
転職活動での「退職理由」の答え方(面接用)
基本の考え方
- ネガティブな印象を避ける
- 自分なりに努力したことと、限界を感じた誠実さを伝える
- 今後どのように前向きに取り組むかをあわせて話す
例1:体調面・心身の限界を理由にする(角が立たない)
「初めての現場で慣れないことも多く、責任の重さにも戸惑いました。自分なりに努力はしましたが、心身のバランスを崩してしまい、このまま続けるのは難しいと判断しました。今回の経験を通じて、自分がどのような環境であれば無理なく力を発揮できるかを見直すことができました。今後は、より長く安心して働ける環境を大切にしたいと考えています。」
もちろん、体調はすっかり良くなったと伝えます。前の経験から、今回の仕事は自分でもやっていけると判断したことが伝わるので、信頼度があがります。
例2:適性や環境とのミスマッチを理由にする(前向きさを重視)
「現場で働く中で、スピード感や求められる役割との間に難しさを感じました。短期間での退職となってしまったのは残念でしたが、自分を見つめ直す貴重な経験になりました。今後は、求められる役割を的確に把握しながら、子どもたち一人ひとりとじっくり向き合える環境で、自分の強みを活かしていきたいと考えています。」
「どこでつまずいたのか・どう学んだのか・これからどうしたいか」がバランスよく伝わるので、短期離職でも印象が悪くなりにくいです。
暗に「この保育園は子ども一人ひとりを大事にしている」と前向きな印象を受けていることが伝わります。
例3:家庭や環境の変化を一部理由に(ぼかしたい場合)
「働く中で、生活リズムや家族とのバランスを保つことが難しくなり、一度立ち止まって見直す必要があると感じて退職を決めました。今後は、自分の働き方に合った職場環境で、より長期的に働けるような選択をしたいと思い、応募いたしました。」
経験からくる判断と準備が期待できる伝え方です。
面接で好印象を持たれるポイント
- 「辞めたこと自体」よりも、「そこから何を学び、今後どうしたいか」に焦点を当てる
- 前職の批判は避け、あくまで自分の学びとして語る
- 「続けられなかった自分」を責めすぎず、誠実さを伝えることを意識する
退職理由を聞かれても、自分の努力や誠実さ、そして次の一歩に向けた前向きな姿勢を伝えることが大切です。失敗ではなく「経験」として、落ち着いて答えましょう。
大切なのは自分自身を守ること

「もう限界かも」と感じたとき、その気持ちを見過ごさずに、大切にしてあげてください。あなたの人生は、あなたのものです。
保育の仕事は本来とても尊く、やりがいのある仕事ですが、つらい環境に無理してとどまる必要はありません。
心と体を守りながら、次のステップに向けて準備をすることも、自分を大切にする大事な一歩です。だからこそ、退職の伝え方や向き合い方は、その後の気持ちの整理や新たな一歩に大きく影響します。
丁寧に別れを告げ、自分の成長のために、前向きに次の環境を選んでください。
あなたの歩みを応援しています。